遊園地再生事業団の舞台『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』を観たのは、先週金曜日の夜。宮沢章夫さんによる3年ぶりの新作の初日(初回)だった。
リーディング公演を除けば、僕にとってもひさしぶりの遊園地再生事業団。まだ公演中なので、詳細を書くのは避けるが、かなりおもしろかった。
映像、音楽、美術、音楽、衣装、戯曲、そして俳優と演出。それらが見事に組み合わさって、目の前に見たこともない世界が現れる。シンプルでシャープな、林巻子さんの美術。ハードなロック調サウンドから、静かでいつまでも聴いていたくなるようなメロディまで、戯曲に合わせて多彩な音楽を紡ぎだす、桜井圭介さん。他にもクオリティの高い人たちが集い、舞台を創り上げている。
遊園地再事業団の魅力はいくつもあるが、ドラマに寄りかからない演劇であること。たとえば、「主人公に困難が降り掛かり、何どもも壁にぶち当たりながら、主人公が成長を遂げる物語」というような、わかりやすいストーリーに頼るような舞台とは、完全に一線を画している。
言葉で表現するのはむずかしいが(演劇を、言葉だけで表現できるわけがないが)、演劇をあまり目にしたことがない人が想像する、演劇とは明らかに違うと思う。俳優が出てくるとはいえ、ドラマや演技の比重が高すぎない舞台といえばいいだろうか。いや、違うな。
映像、音楽、美術、音楽、衣装、戯曲、俳優、演出などが掛け算にようにぶつかり合う、総合芸術といってもいいかもしれない。「演劇を楽しむ」「舞台を味わう」などとはいえても、「芝居を観る」みたいな単純な言い方はできないかもしれない。
俳優が舞台上でビデオカメラを操作し、そこで撮影中の映像も舞台に取り入れる、という演劇。僕はそこに、他の演劇にはないライブ感を感じた。映像に客席が映ったときは一瞬、舞台と客席が逆転したかのようにも思えた。
宮沢さんと桜井さんの名コンビはかなり長いと思うが、二人の関係はまるで、映画監督のティム・バートンと、その作品の音楽の多くを手がけるダニー・エルフマンのようだ。作品のタイプが違えども、名コンビのどちらが欠けてもその独特の世界は創造できないかもしれないように思える。
演劇でありながら、ダンスやバレエ、あるいはミュージシャンのライブを体験するような、そんな雰囲気も感じられた。
座・高円寺で10月24日まで。
演劇は、どこまで行けるのか。遊園地再生事業団には、どこまで離れられるか、今後も挑戦してほしいと思った。
コメントを残す