髙橋源一郎、『風の歌を聴け』の衝撃

 
 図書館で手にとった文芸誌『群像』(2014年9月号、講談社)で、「清水良典のデビュー小説論 第四回は髙橋源一郎」を読み、特に印象に残った部分を書き写してみる。
 
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 髙橋は長いあいだ、インタビューなどで村上春樹を読んだことがないと表明していた。しかし二◯◯六年の『文藝夏号 特集髙橋源一郎』に掲載された内田樹によるインタビューにおいて、『風の歌を聴け』との出会いを初めて明かしている。群像新人文学賞の『風の歌を聴け』が掲載された『群像』を彼は立ち読みし、その一ページ目を読んだだけで「これはヤバイって思った」というのである。
 
 
髙橋 五月七日に新人賞が載る六月号が発売だった。それで忘れもしない七九年、横浜の有隣堂で一ページ目をめくって読んで。たぶん僕はそれを読んで、世界で一番衝撃を受けた人間かもしれない。僕はその前に十年分読んでいて新しい作家なんか誰もいなかったので安心していたんです。それが一ページ目を読んで「……いたよ」って(笑)。
(中略)
 あの日のことは忘れられない。なぜかというとそのちょっと前に『さようなら、ギャングたち』の全体像も浮かんでいて、「しめしめ、これで世界は俺のものだ」っていう感じだったんです。ところが一ページで、「あ、この人はわかってるな」と思った。同じ学年かと思ったら少し上だったんだよね。「僕より先にやるなよ。まずい、やめてくれよ」って思った。僕は何十年小説を読んでてそういう思いは一回だけですけどね。
(中略)
 でも、あとは読まなくても何が書いてあるかわかると思った。わかるんだよね、やろうとしていることが。その瞬間思ったのは、この人は僕のすごく近いところにいる、でも結局全然違うところに行くんだろうなってことだった。それで余計にヤバイと思ったんだ。
 
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 僕は、文章を読みながら、高校か大学の頃、いくつかの現代美術作品に遭遇したときの衝撃を思い出した。
 
 
 
『風の歌を聴け』
著者:村上春樹
発行:講談社

 
『風の歌を聴け』
著者:村上春樹
発行:講談社

 
『群像』
2014年9月号
発行:講談社

 
 
 

 

Yasu
  • Yasu
  • デザイナーを経て、クリエイティブディレクター、コピーライター、ライターに。「ベースボール」代表。広告&Web企画・制作、インタビュー構成をはじめ『深川福々』で4コマ漫画「鬼平太生半可帳」連載中。書籍企画・編集協力に『年がら年中長嶋茂雄』など。ラフスケッチ、サムネイル作成、撮影も。