車椅子と小さな親切の連鎖

 
 この文章車椅子ユーザーあゆさんの『車椅子での入店拒否について』)を読みながら、ある話を思い出した。それは以前、フランスのパリに何年も住んでいたという、翻訳会社の人から聞いた話。「車椅子用のリフトもいいかもしれないけど、費用もかかる。パリの地下鉄では、たまたま近くにいた人がみんなで車椅子を持ち上げたり、自然に協力し合うから、エスカレーターとかエレベーターとかそういうのがなくてもいいんだよね」
 
 そういえば学生時代、パリに行く前、恩師の高島先生と坪内先生がこんなことを言っていた。「パリの地下鉄(メトロ)では、地下鉄の入口の手で開けるドアを、次の人が来るまで持っておくのはマナーやねん」。実際、パリでは紳士も婦人もその通りだった。ドアを持って次の人が来るまで待つと、次の人は「メルシー」と言って、また次の人が来るまで待つ。次の人が来るまでに十メートル以上あっても、みんな待っていたような記憶がある。小さな親切の連鎖って、わるくないと思う。
 
 
 

Yasu
  • Yasu
  • デザイナーを経て、クリエイティブディレクター、コピーライター、ライターに。「ベースボール」代表。広告&Web企画・制作、インタビュー構成をはじめ『深川福々』で4コマ漫画「鬼平太生半可帳」連載中。書籍企画・編集協力に『年がら年中長嶋茂雄』など。ラフスケッチ、サムネイル作成、撮影も。

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