野田秀樹の「ひつまぶし」

 
 野田秀樹さんの『ひつまぶし』という本。野田節炸裂という感じでおもしろい。雑誌『AERA(アエラ)』での連載をまとめたものらしいが、のっけから「友情出演」を野田さん流のセンスでもって取り上げていて笑った。昔、新潮社の雑誌『03』で(たしか)連載していた『この人をほめよ』も傑作だったけど、それを彷彿とさせる内容。

「友情出演」や「特別出演」というのはなんだろう、といい、「友情出演」があるのなら、友情以上のものを感じている場合、「愛情出演」というのがあってもいいし、肉体関係を結んでしまった場合は「痴情出演」といってもいい、などバカバカしくて立ち読みしながら声を上げて笑いそうになった。
 立ち読みして購入してないのに、人にすすめるなって言われそうだけど、きょう買いに行こうかな、というくらいおもしろそうな内容だった。野田さんの芝居を何度か観たことがあるし、戯曲もいくつか読んだことがあるけど、野田さん独自の切り口、視点のユニークさ、言葉に対する感性の鋭さがこの本にもよく表れている。

 ビートたけしさんの漫談くらいの切れ味。って、たけしさんの漫談はもう、めったに見られないと思うけど。

 このところ、ビジネス書を読むことも多かったけど、バカバカしいおもしろさに書籍でふれたのは、ひさしぶりだ。

 帯の裏表紙の部分に、「エンターテインメントを日本語に正しく訳すと『ひまつぶし』になる」みたいなことが書いてあって、それにもクスリとした。あ、これだと、クスリ浸けのほうのクスリみたいだな。クスッとした、だった。

 本のタイトルは、『ひまつぶし』でなく、『ひつまぶし』なんだけどね。
 
 ビジネス書の「いくら儲かった」「私はこうやって成功した」というのもいいけれど、そういうのにゲップが出かかっていた僕にはとって、「箸休め」というか「気分転換」というか、まさに「ひまつぶし」になりそうな本だった(あ、ここ、ほめ言葉で)。TVブロスの松尾スズキさん(と河合克夫さん)の連載もおもしろいけど、やはり、野田さんもいい。バカバカしさ、万歳!

 バカバカしいことって、なくてもいいことのようにも見えるけど、なんでもかんでも効率主義じゃつらい。というか、肌の保湿液みたいなのもので、潤いがないと毎日はカサついてしまう。その意味で、この『ひつまぶし』は、一見なくてもよさそうに思えて、実はあったほうがいい本。いや、ないと困る本。ムダのように見えて、実はムダでない。グレートなムダ、ムレート・ムダ。ムダヒデキ。あ、無理やりっぽいな。なんだかよく分からなくてきたけど、こういう本が存在して、こういう本が楽しめることって、いいことだと思う。まだまだ、日本も、現代も捨てたもんじゃない。

 最後にもうひとつ。表紙のイラスト、うまいなぁ、おもしろいなぁ、と思ったら白根ゆたんぽさんだった。最初は「へたうま」と呼ばれていたような気がするけど、めちゃくちゃ、うまいよね。でも、「うまうま」ではない。うまいだけで味がない、魅力がない絵とは違う。こういうの、なんて言うんだろう。

 

 
 
 
 


Comments

“野田秀樹の「ひつまぶし」” への4件のフィードバック

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