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「コラボウズ」第1回

絵・吉田健 文・大倉恭弘



「50ccの欲望」


和尚のイラスト


連載タイトルから連想したのは、K山。

高校時代、K山へ林間学校で行ったのだが、
あれはけっこう記憶に残っている。

1泊だったか、2泊だったか。
日数が短かったが、なかなか思い出深い体験だった。

僕たちは電車をいくつか乗り継ぎ、その山へ向かった。
ものすごく遠いわけではなく、高校から数時間の道のりだったはずだ。

そのお寺では、若いお坊さんが、
自分たちのわるさについて話をしてくれた。

夜、みんなで寝ている部屋を抜け出して、
女子の部屋へ遊びに行くやつがいたのだが、
どういう流れだったか忘れたが、
僕たちは、若い坊さんの部屋にいた。

あれは、説教される場面だったのかもしれない。
僕もその場にいたから、女子の部屋へもぐり込むところだったのか。
そのあたりの記憶は、はっきりいってない。

坊さんに怒られるのかと思い、少しビクビクしながら、
僕たちは正座されられたのではなかった。


説教を予測して僕らが聞かされたのは、こんな話だった。

大きなホクロが左ほほにある、若い坊さんの一人が言った。
「俺な、悪さばっかりしててな、親も呆れて、
もうお寺の子になってこい!」って言われて、ここへ来てん」

「僕は、なりたくて来たわけやない。
親が住職やから、修行に来さされただけ。
正直、仏教を信じてるわけでもない」
目のつぶらな坊さんが語った。

メガネをかけた若い坊さんはこう吐き捨てた。
「肉も食うてるで。そんなもん、若いねんから
精進料理みたいなもんで、やっていけるわけないやろ」

また、やせた坊さん(どの若い坊さんも太ってはいなかったけど)は、
笑いながら、こんなことを教えてくれた。
「毎週末の夜、俺ら、原付で走り回ってんねん。坊さんの坊走族や。
もちろん、袈裟を着てやないけどな」

原付バイクで坊主が群れをなして走り回っても、
俗世間から隔絶されたこの町では、警察の取り締まりは行われない。
パトカーに追われることもない。そんな話もしていたように思う。
下界よりも自由というか、世間一般のルールはここにはないのか。そう感じた。


短期間の林間学校で、僕らが身につけたものは何かあったのか。
精神修行のため、みたいな大義名分はあったはずだが、何かプラスになったかどうか。

僕がそこで学んだもの。それは、たぶん、ひとつ。
坊さんも煩悩を捨てるのはむずかしいんだな、ということ。


もし、あのときの坊さんに会ったら、こんな言葉を贈ってもいいと思う。
「コラ、坊主! いや、おおきに。
お坊さんも人それぞれで、みんながみんな偉いわけやない。
それを知ることができたのは、自分らのおかげやわ」

(09-12-26)




published : May 2, 2009
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